正義のミカタ

「もぅ、和ちゃん」
私は、お弁当のタコさんウィンナーを口に運びながら、向かい合ってる席の”和ちゃん”に声をかけた。
「見たわよ、今日の学校新聞。またやったんでしょ」
「あって、ほうらないもん、わらしのめのまえで、あんらこと…」
「……上手く話せないなら、口の中のミートボールなくなってからにして…」
"和ちゃん"はようやくミートボールを食べ終えてから、話しかけてきた。
「だって、しょうがないもん、私の目の前であんなこと…、お天道様が許しても、この私は見逃せるわけないじゃない。なんたって私は"正義の…」
「…味方”…でしょ？ハイハイ」
「美咲ぃ、わかってんならツッコまないでほしいな」
「何年つきあってると思ってるのよ」

そう、"私"佐藤　美咲と"和ちゃん"高梨　和子は、保育園の時から同じ所に通っていた。
もっとも、こんなに親しく話し合えるようになったのは、一昨年前、中学の修学旅行の時の”ある事件”からだけど。
でも、私は初めて彼女を見た時から、ずっと彼女のことを見てきた。だから”和ちゃん”のことは、きっとこのクラスの誰よりもよくわかっている……はずである。

「う…ん、２、３年ぐらいかなぁ…」
そう言う和ちゃんは、私よりあまり意識してないみたい。
「それよりも、美咲。今は物騒なんだから、自分の身は自分で守れるようにならないと。
学校新聞見たんなら、わかるでしょ」
学校新聞に載ってた事件…和ちゃんが通学中の電車の中で痴漢をやっつけたニュースだ。
「でも、和ちゃんの場合、一度や二度…ううん、五度や十度じゃないもの」

和ちゃんは、今回の痴漢撃退だけでなく、学校内のちょっとした事件も解決することで、この辺りではすっかり有名になっている。
いつも、解決後に「どちらさま」と質問されて『正義の味方』なんて答えるもんだから、学校新聞の欄にも『今日の"正義の味方"コーナー』ができているぐらいだ。
そんな和ちゃんのことを頼もしくとは思うけど、反面、あきれ果てている。

「校内だけじゃなく、公共の場でもやるとは思わなかったわ。私たち、警察官でも探偵でもなんでもないんだから」
「…ゴメン、美咲。ツッコんでいい？」
「え？何？」
和ちゃんが真顔で迫ってくるなんて珍しい。思わず身構えていると
「私の伯父は探偵で、母は婦人警官なんだけど」

（キーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン、カーン、コーン）

え……えぇ…と、こういう時どう対処すればいいのかな…